Wi-Fiの誕生
初のWi-Fiは1990年代後半に登場し、21世紀初頭に急成長期を迎えました。 現在モバイルスマート端末の普及により、ほとんどのモバイルデバイスにはイーサネットインターフェースがないため、Wi-Fiはモバイル通信のアクセス技術として幅広く利用されています。Wi-Fiは家庭だけでなく、世界中の企業や公共の場でも使われています。Wi-Fi標準の技術名称はIEEE 802.11で、IEEEより規格を維持していることの意味もあります。次にWi-Fiの成り立ちを語っております。
1971 年 6 月に、初のデータパケットが ALOHAnet と呼ばれる無線ネットワーク上で 9600bps の速度で送信されることに成功しました。このネットワークで採用された ALOHA 通信プロトコルは、IEEE 802.11 プロトコルの前身でした.1985年、米国の政府機関である連邦通信委員会(FCC)は無線ネットワーク通信をサポートするため、900MHz、2.4GHz、5GHzなどの免許不要で利用可能な無線周波数帯を開放しました。 これらの「ジャンクバンド」と呼ばれる無線周波数帯は、産業、科学、医療(ISM)帯とライセンスのない国家情報基盤U-NII(National Information Infrastructure)帯から取られています。
その後、米国電気電子学会 (IEEE) は無線LAN (WLAN) に関する標準化開発およびリリースを行う802.11 委員会を設立しました。 委員会は、1997 年 6 月に免許不要の 2.4 GHz 周波数帯域を使用し、周波数ホッピング方式 (FHSS) と前方誤り訂正 (FEC) を採用して 2 Mbps の伝送速度を実現できる初の IEEE 802.11 標準規格をリリースしました。 1999 年に 802.11 標準規格に対して改訂して、802.11a と 802.11b 標準規格をリリースしました。
Wi-Fi製品や端末の互換性・相互運用性を実現するために、1999年にWi-Fi製品の相互運用性を試験・認証を行うWi-Fi Alliance®が設立されました。 同時に、「Wi-Fi ®」という名称を作り、商標登録も行いました。
以下の画像は、Wi-Fiプロトコルの進化を示したものです。
802.11 b
802.11bは 1999 年にIEEEより標準化されました。802.11bは、802.11規格と同じ2.4GHzの周波数を使用しHR/DSSS(High Speed Direct Sequence Spread Spectrum)というシンプルな変調方式、及びCCK(Complementary Code Keying)変調方式を採用し、理論上速度は最大11Mbps を実現しました。802.11規格としては最も遅い速度でした。 802.11bは2.4GHzで動作するため、2.4GHzを使用する家電製品や他のネットワークから干渉を受けやすいです。
802.11の下位互換性
当初から、さまざまな802.11規格は下位互換性を持つように設計されており、古いデバイスは新世代のデバイスと同じネットワークで動作させることができます。 ネットワーク管理者は、新しい標準のバージョンリリースたびに機器を交換する必要がなく、徐々に改善していくことができます。 これにより802.11技術が継続的な発展できました。 しかし802.11bは例外として、直交周波数分割多重(OFDM)変調方式を使用されなくて下位互換性をもってないため、OFDM を採用された802.11 規格に対応デバイスは必ず802.11b 規格対応デバイスがデコードできないトラフィックも含めて送信されるすべてのトラフィックを認識しなければならないです。
これは、送信要求 (RTS)/送信可 (CTS)を保護メカニズムとして使用することによって実現できました。 デバイスがトラフィックを送信する準備ができるたびに、 RTS メッセージを送信し、送信メッセジーはCTS メッセージによってさらに確認されます。 これで、データ フレームごとに、管理フレームを2つ追加送信する必要があります。 これにより、ネットワーク上で大量のトラフィック オーバーヘッドが発生し、非常に効率が悪いです。 一部のネットワーク管理者は、この問題を回避するために、無線AP からの 802.11b レート (1、2、5.5、および 11 Mbps) を無効にします。 現在 802.11b のみを使用するクライアントは少なくなってきており、802.11b レートを停止することは正しい選択でした。 ただし、この選択では Wi-Fi カバレッジが制限されます。 802.11b規格ではないデバイスは、信号品質が低い場合、802.11b レートにフォールバックする場合があります。 そのため、 AP で 1、2、5.5、および 11 Mbps のレートを無効にすると、エッジ クライアントが接続できなくなります。
802.11 a
802.11a 標準規格も 1999 年に IEEE に標準化されました。 802.11a 標準規格は混雑の少ない 5 GHz 帯域で動作するため、干渉されにくくなります。この標準規格は、元の規格と同じデータリンク層プロトコルとフレーム フォーマットを使用する上でOFDM 変調方式を採用されたエアインターフェイス物理層と最大 64 の直交振幅変調 (QAM)も採用されました。これで帯域幅は802.11b 標準規格より大幅に広げ、理論上のスピードが最高54 Mbps に達していました。 OFDMは、20MHzの帯域幅で52個のサブキャリアを拡張できる変調方式で、並列伝送により伝送速度を大幅に向上させます。ただし、802.11a標準規格対応のデバイスの実装コストと複雑さが高いため、最初の商用 Wi-Fiはほとんど 802.11b 標準規格を使用していました。それは当初市場で 802.11a 規格対応デバイスが少ない原因でした。
802.11 g
802.11g 標準規格は2003 年にIEEE より標準化されました。802.11g標準規格 は、改訂版 802.11a標準規格 と 802.11b標準規格を組み合わせたものです。 802.11g 標準規格は、802.11a標準規格 と同じ OFDM 変調技術を使用し、64-QAM 符号化技術を使用し、802.11a 標準規格と同様に理論上速度は最大54 Mbps を実現できました。しかし、802.11g 標準規格は 802.11b 標準規格と同様に、混み合った 2.4 GHz 帯域で動作するため、同じ干渉の問題が発生しやすいです。 802.11g 標準規格は 802.11b 標準規格対応デバイスとの下位互換性があり、802.11b 標準規格端末は 802.11g 標準規格アクセスポイントに接続できます (ただし、802.11b標準規格の速度で動作します)。従来の端末で新しい標準規格に対応できるため、ユーザーが受けやすい技術です。
802.11n(Wi-Fi 4)
IEEE は、2009 年に 802.11n標準規格修正案をリリースしました。 802.11n標準規格はより多くの新機能をもたらします。
802.11n 標準規格は、2.4GHz と 5GHz帯の2つの周波数帯域を利用し、802.11a/b/g との下位互換性があり、さらに40MHz高い帯域幅(20MHzの2チャンネルを束ねる)で通信できます。 802.11n標準規格 は引き続き OFDM と 64-QAM を採用しますが、その上アンテナに多入力多出力 (MIMO)を採用することでデバイスは複数のアンテナを使用して同時に送受信できることを実現できました。送受信機に最大4つのアンテナを搭載し、複数のアンテナを使用して同時に送受信できるため、システムのスループットと安定性を向上させることで帯域幅の高い占用度と送信電力高いの欠点を改善できました。 これらの機能に加えて、いくつかの改善(802.11標準規格の単一MAC層プロトコルの最適化など)によって802.11n標準規格対応する機器のスループットは600Mbpsを達して従来の速度より10倍速くなりました。802.11n標準規格により、Wi-Fiがより速く、より信頼性が高くなりました。
802.11ac(Wi-Fi 5)
802.11ac標準規格は5GHz帯を利用して、プロトコル標準規格は2段階があり、一段階は2014年にリリースされた802.11ac Wave1、二段階は2015年にリリースされた802.11ac Wave2で両方とも802.11a/b/g/nと下位互換性があります。 802.11ac Wave1対応デバイスは3.4Gbps、Wave2対応デバイスは6.9Gbpsで転送でき、802.11nと比べると約8倍速くなります。 802.11acでは、MIMOストリーム数を増加し(4本から8本へ)、さらにコーディング性能(最大256-QAM)によりチャネル利用が改善され最大160MHzのチャネルで動作可能になります。 またDL MU-MIMO(Downlink Multi-User-Multi-Input-Multi-Output) 技術を採用することにより複数の端末に同時にダウンリンク送信し、最大4端末まで同時に送信できます。
802.11ax(Wi-Fi 6)
802.11ax標準規格は2019年に標準化されました。2.4GHz帯と5GHz帯の両方周波数帯域で動作し、従来のWi-Fiデバイスとも互換性もあります。802.11ax標準規格が高速性と並行性を実現できた二つのコア技術はMU-MIMOとOFDMA方式です。OFDMA方式では、小さい且つ専用サブチャンネルを複数の端末に同時に提供し、端末あたりの平均伝送速度を向上させます。アップリンクダウンリンクMU-MIMO(UL/DL MU-MIMO) により、アップリンクでは、802.11acの8倍の容量で最大8ユーザーまでを同時にサービス提供することができます。ダウンリンクでは802.11acの2倍の容量で最大8ユーザーまで同時にサービスを提供することができます。その上802.11axは 「1024QAM」、「Spatial Reuse」、「BSS Coloring」、「Network Allocation Vector」(NAV)、「Target Wakeup Time」(TWT)などの技術の採用により、最大9.6Gbpsの伝送速度を実現できました。
最新のWi-Fiネーミングルール
2018 年、Wi-Fi Allianceは、Wi-Fi規格名をさらに区別し理解しやすくするため、リリースされた 802.11ax 標準を Wi-Fi 6 に変更し、以前にリリースされた802.11n と 802.11acを、それぞれ Wi-Fi 4 と Wi-Fi 5 に変更しました。
次の表は、今までのWi-Fi プロトコルの比較です。