Wi-Fi 6は以下の特徴があります。
1通信スピードの向上
高次の変調方式(1024-QAM)の導入、サブキャリア本数の増加、フレーム間(IFS)オーバヘッドの低減などにより、Wi-Fi 6の最大接続速度を9.6Gbpsに向上させました。
2 高密度環境でも接続可能
MU-MIMO(マルチユーザーMIMO)とアップリンクとダウンリンクのOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)により、高密度実装シナリオで同時接続性と端末の平均レートを向上させました。
3 干渉防止
4G (LTE)で採用されているSpatial Reuse技術(SR)を導入し、AP間の相互干渉を大幅に低減し、アクセス容量と安定性を向上させました。
4 その他の特徴
省電力マネジメント技術TWT(Target Wake Up Time)に対応の上、2.4GHz /5GHz帯両方使用可能です。
Wi-Fi6は快適、サクサク通信できる理由1:転送レートの向上
Wi-Fi 6の転送レートの向上について話す前に、Wi-Fi の理論上の帯域幅計算式からWi-Fi 転送レートに関わる性能要素はどんなものがあります。
Wi-Fi 理論上の帯域幅 = (シンボルビット長×コードレート×データ サブキャリア数)×(1/伝送期間)×空間ストリーム数。
1 シンボルビット長
データサブキャリアが1回に伝送できるデータ長は変調方式に依存します。例えば64-QAMは6ビット、256-QAMは8ビット、1024-QAMは10ビットで、変調方式によってデータ伝送効率も違います。
2 データサブキャリア数
データサブキャリアの数は、プロトコルのフレーム構造と利用可能な帯域幅の組み合わせで決まり、ある帯域幅でデータサブキャリアの数が多いほど、データを同期して送信する能力が高くなります。
3コードレート
変調方式と一定の関係があり、コードレートによって変調方式も違います。使用中にAP と端末は信号強度や信号品質などの要因に応じてコードレートを選択しています。 .
4伝送期間
一回の転送が占用するポートの時間がプロトコルによって決められます。例えばWi-Fi 5は3.6マイクロ秒(GI時間-0.4usを含む)です。
5 空間ストリーム
MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)技術により、複数のアンテナでデータトラフィックを同時に送信し、空間リソースを最大限に活用してWi-Fiパフォーマンスを飛躍的に向上させます(Wi-Fi 6の最大空間ストリーム数はWi-Fi 5と同じ、どちらも8本の空間ストリームです)。
したがって、Wi-Fi の理論上の帯域幅に関わるいくつかの要素から、レートの改善は変調方式、データサブキャリアの数、コードレート、伝送期間、伝送速度などの指標によって決められます。ここではWi-Fi 5と同じ帯域幅 (20/40/80/160 MHz) と空間ストリーム (最大 8 つの空間ストリーム) を維持することについては、詳しく説明しません.コードレートは信号強度とチャネル品質に関わるためこの章では、変調方式、データ サブキャリア数、および伝送期間についてメインとして説明いたします。
まず、Wi-Fi 6の従来と違う物理層フレーム構造が転送レート向上に影響があるかどうか確認しましょう。
図1:Wi-Fi 6の物理層のフレーム構造
図 1 からWi-Fi 6 物理層のフレーム構造には物理層フレームヘッダー、DATA および PE が含まれていることがわかります。物理層のフレームヘッダーは主にトラフィックの同期と管理を行い、PE はデバイスの機能情報の送信を行いますが、実際必要になるのがDATA のデータフレームだけになります。
時間軸で見ると、DATAデータフレームはPayload(データの本体)とGI(Guard Interval、フレーム間隔)で構成されており、GIは主に2つのPayload間のクロストークを防ぐことであり、GIが導入られてる保護間隔でオーバーヘッドであり、ペイロードのみが転送データの本体です。
物理層フレームの各要素の役割から、ペイロードの実際の伝送量がWi-Fi 伝送速度に大きな影響があります。Payload伝送量を向上するには二つの方法があります。1つ目はペイロードのデータ伝送量を増やす(高次変調方式を採用し、データサブキャリア数を増やす)ことで、有効的なデータ伝送量を増やすことがでます。2つ目は一定期間内のPayload送信時間比率を増やします、送信期間内のPayload送信時間比率が高いほど、送信する情報量が多くなり、転送レートも高くなります。上記2点からWi-Fi6では伝送効率と伝送時間割合の向上について詳しく話しましょう。
スピードアップ - 高次変調 (1024-QAM)
無線信号サブキャリアの単一シンボルのデータ密度は変調方式によって決められます. 同じ帯域幅で、高次の変調技術を使用して、より高いレートを達成することができます.
いわゆる変調は、0 と 1 などのバイナリデータ信号を電波に変換するプロセスです. 逆の場合は、復調と呼ばれます. 変調方式によって、実現できる伝送能力も違います. 変調方式が高いほど、変換中のデータ密度が高いです。一般的な変調方式が図 2 を参照してください。
図2各変調方式の比較図
(左から右へ低次→高次変調方式)
Wi-Fi 6 では、高次の変調方式1024-QAM を採用されています. Wi-Fi 5 の256-QAM と比較して、1024Q-AM 物理層のネゴシエーション・レートが25% までに増加しています。では、どうやって25% まで増加したでしょうか。まず、変調方式とデータ密度の計算方法を見てみましょう。
計算方法は非常に簡単で、QAM 値は 2 の N 乗でそのシンボルビットは N です。したがって、64-QAM のシンボルビット長は 6 ビット、つまり一度に 6 ビットのデータを送信できることを意味し、256-QAM のシンボルビット長は 8 ビット、1024-QAM のシンボルビット長は当然 10 ビットですのでWi-Fi 6 はWi-Fi 5 より物理層のネゴシエーション・レートが25% に向上できたことが分かりました。
Wi-Fi 4 ~ Wi-Fi 6 に対応可能な変調方式は次のとおりです。
▲表1:変調方式参照表
表 1記載用語について
• MCS (Modulation and Coding Scheme): 変調方式と符号化率の組み合わせでWi-Fi デバイスの実際の接続レートは、MCS で動的かつ適応的に選択されます。無線信号が強い場合、MCS は高次の組み合わせ (高ビット + 低冗長性) を選択し、無線信号が弱い場合、MCS は低次の組み合わせ (低ビット + 高冗長性) を選択します。
・符号化率:変調中で誤り訂正やチェックのために挿入された有効データの全データに対する割合で、例えば 5/6 は 5/6 が有効データ、1/6 が冗長データであることを意味します。
スピードアップ - サブキャリアの数の増加
サブキャリアの占有率について話す前に、サブキャリアは一体どんなものかいついて説明させていただきます。
図3は、スペクトラムアナライザーで撮った信号エネルギー図です。 振幅の高いところをよく見ると、平坦ではなく、小さな突起が多数あり、これがサブキャリアであることが分かります。
スペクトラムアナライザーで撮った信号エネルギー図を見ると、サブキャリア同士が重なっていることがわかりますが、なぜ互いに干渉せずに重なっているのでしょうか? これはOFDM(直交周波数分割多重)変調のおかげですが、先ほどのQAM変調(QAM変調はコンステレーションマッピング、つまり0と1のビットを変調して符号化するのがベースバンド変調、OFDM変調はソース符号化の結果をRFに変調して送信するのがチャンネル変調である)とは違います。OFDM変調は、特殊なマルチキャリア伝送方式で、チャネルをサブキャリアにスライスしてチャネル全体の使用率を高め、無線伝送速度を向上させるとともにサブキャリア間の相互干渉を周波数直交化(高速フーリエ変換(FFT/IFFT)で実現)して、帯域利用効率を大幅に改善されています。
図3:スペクトラムアナライザーで撮った信号エネルギー図
図4:OFDM信号スペクトルのイメージ
前の Wi-Fi 理論上の帯域幅の計算式から、理論帯域幅はデータサブキャリアの数に比例することがわかります。 OFDM変調方式で考えると、サブキャリアは重畳されていますが、1周期でデータを伝送するサブキャリアの数を増やすには、重なるサブキャリアの間隔を狭くしてサブキャリア数を増やす必要があります。図5のイメージを参照
図5:Wi-Fi 5とWi-Fi 6のサブキャリア間隔の比較
サブキャリア数の増加による効率向上を示すために、同じチャネル帯域幅80MHzのWi-Fi 5とWi-Fi 6の有効デーサブキャリアシェアを計算してみましょう。
表2 :80MHz帯域幅におけるWi-Fi 5とWi-Fi 6の有効サブキャリア占有率の比較
表 2 の比較から、Wi-Fi 6 の有効データのサブキャリアの割合が 91.406% から 95.703% に増加し、効率が 4.7% を向上し、物理のレイヤーにおける理論上転送レートが 4.7% を向上しました。
スピードアップ - 有効時間の占有率を上げる
上記Wi-Fi 6の物理層フレーム構造の解析から、高速化のもう一つの有効な方法は、送信期間におけるPayload(データ本体)の時間占有率を上げることであり、一定の送信期間におけるGI(Guard Interval)の長さを短くすれば、Payloadの時間占有率が上がることがわかっています。
図 6:ペイロードと GI の1サイクルの時系列イメージ図
Wi-Fi6のプロトコルでは、0.8マイクロ秒、1.6マイクロ秒、3.2マイクロ秒の3つのGI持続時間が規定されています。 前章と合わせると、Wi-Fi 6ではサブキャリア間隔が改善されたことにより、伝送周期で伝送されるサブキャリア数が4倍を増え、チャネル変調時間が4倍を向上、つまりWi-Fi 5の3.2マイクロ秒から12.8マイクロ秒に改善されています。Wi-Fi 6で新たに規定された3つのGIと合わせると、送信周期におけるペイロードの割合を計算できます。
▲表3:Payload時間割合表
表 3 からGI の持続時間が 0.8 マイクロ秒の場合、Wi-Fi 6 の Payload 時間占用率は Wi-Fi 4/5 の 88.88% から 94.11% に改善し、5.23% 効率アップしました、すなわち物理層のネゴシエーション・レートが5.23%を向上されました。GI時間が1.6マイクロ秒と3.2マイクロ秒の場合、Wi-Fi 4/5と比べて効率は向上されてませんが、GI時間を長くすることで、マルチパス干渉や屋外長距離伝送シナリオでの無線伝送の安定性を向上させることができます。Wi-Fi 6のAPと端末は、使用環境に応じて異なるGI持続時間を自動的にネゴシエートし、あらゆる環境での最適な通信体験を実現できました。
上記のレート向上の話では、変調方式(シンボルビット長)、サブキャリア数、サブキャリア送信時間(送信周期)を重点として説明しましたが帯域幅、コードレート、空間ストリームについてはまだ説明していません、Wi-Fi帯域幅の全体像を把握するために、Wi-Fi 6が対応した最大コードレートと空間ストリーム最大数でWi-Fi 6対応可能な最大帯域幅を計算してみましょう。
▲表4:Wi-Fi 6理論上の帯域幅計算表
表 4 からWi-Fi 6規格は速度向上に力を入れ、速度向上できことを分かりました。これらの速度向上は、特にビデオ、AR/VR、オフィスシーンなどの膨大な通信量の応用に適しております。これらのシナリオを MU-MIMO/OFDMA技術と組み合わせることで、ワイヤレス システム全体のパフォーマンスと容量を大幅に向上させることができます. 次に、MU-MIMO/OFDMA 技術がワイヤレス システムの容量をどのように向上させるかを見てみましょう.
Wi-Fi6は快適、サクサク通信できる理由2:高密度環境でのアクセス(マルチユーザー伝送)
Wi-Fi端末の普及に伴い、複数の端末が同じWi-Fiネットワークにアクセスすることはよくあります.従来の技術ではこのような高密度アクセスでは常に途方に暮れていました.では、高密度環境でのアクセスシナリオにおける Wi-Fi 6はどんな解決方法があるでしょうか?これは、Wi-Fi 6 で使用される MU-MIMO および OFDMA 技術に依存します。
高密度環境でのアクセス - MU-MIMO (Multiple Input Multiple Output)
MIMO技術、すなわち複数アンテナによる同期送受信は、通常、受信/送信アンテナ数をI×Oで識別し、MIMO技術により単一端末の伝送効率と品質を向上させます。 従来のMIMO技術は、厳密に言えば、SU-MIMO(シングルユーザーMIMO)とも呼ばれ、複数のアンテナ同期伝送をサポートしていますが、同時に同じチャネルで、無線APは1つの端末としか通信できない、つまり、複数の端末間はまだシリアル伝送です。
SU-MIMO 通信イメージは図 7 を参照
▲図7:Single-user MIMO通信イメージ
SU-MIMO と比較して、MU-MIMO (Multi-User MIMO、マルチユーザー MIMO) は、無線 AP が同時間帯に1台端末のみの通信制限を解決できました。 MU-MIMO 技術により、複数の端末が同時にデータを送信できるようになり、複数の端末の送信効率と品質が向上できました。
MU-MIMO 技術は Wi-Fi 5 の Wave2 段階で使用されていますが、AP のダウンリンク方向でしか使用できず、不完全な MU-MIMO です。 Wi-Fi 6 技術は完全な MU-MIMO技術を使用し、アップリンクとダウンリンクの 8×8 MU-MIMO を同時に対応します。次ダウンリンク MU-MIMO 技術とWi-Fi 6 に新たに追加されたアップリンク MU-MIMO の具体的な実装原理を見てみましょう。
ダウンリンク MU-MIMO
ダウンリンク MU-MIMO の基本的な実装原理は、Wi-Fi 5 で使用されるダウンリンク MU-MIMO と同じです。どちらも端末がプリコーディングまたはビームフォーミングのためにチャネル状態情報 (CSI、チャネル状態情報) を知る必要があります。具体的な処理を提としてはAP が NDP (Null Data Packet) フレームを積極的に送信して、チャネル情報のフィードバックをインタラクティブに完了し、チャネル マトリックスを形成するというもので図 8 にh1、h2、h3、h4 のようにMIMOシステムにおけるチャネル状態情報を示す「チャネル行列」という新しい概念です、図8に示すように、図中h1、h2、h3、h4は、マトリックスとも呼ばれる正方形の配列を形成し、この時のチャンネルは2×2MIMOのチャネル行列の状態となります。
▲図8:チャンネルマトリックス図
APは、NDPフレームを積極的に送信してチャネルマトリクスのパラメータをやり取り完成させると、図9に示すようにビームフォーミングを形成し複数ユーザへ同時送信を可能です。
図 9: AP はMU-MIMO ビームフォーミングを使用し、異なる空間位置にいる複数のユーザーに対応
ダウンリンク MU-MIMO パケット相互作用イメージは図 10 に示します。
AP (ビームフォーマー) は NDP-A (Beamformer)、NDP、およびTriggerフレームを送信し、STA はフィードバック フレームを介してチャネル マトリックスをフィードバックします。このとき、APは、フィードバック情報に従ってプリコーディングを行い、ビームフォーミングを実現し、ユーザー間の相互干渉を回避します。
図 10 :APはMU-MIMOをリクエスト操作のチャンネル情報
図10コントロール フレームのアクションに関する注意事項:
• NDP-A フレーム:チャネル情報をフィードバックする必要があるユーザーに通知する役割です。
• NDP フレーム: グループ化開始の検出、チャネル推定、時刻同期などに使用されます。
• Triggerフレーム: 主に PPDU (PHY Protocol Data Unit、物理層プロトコルデータ ユニット) の長さと MCS が含まれます。
上記3つ制御フレームは、MU-MIMOに対応可能な端末だけを認識できます。
チャネル情報のフィードバックが完了した後、AP はデータ情報をすべての MU-MIMO ユーザーに同時に送信し、STA (図 11 の STA1) を指定して暗黙のブロック確認応答(BA フレーム)を使用します。他の STA (図 11 の STA2 と STA3) は、ブロック確認応答 (BA フレーム)を採用し、STA1 はデータを受信した後、SIFS (Short interframe space, short interframe space) 時間を経ってから応答します。暗黙的ブロック確認応答 (BA フレーム). フレーム),に応答し、残りの STA はデータを受信した後にステータスを記録し, BA フレームを送信する前に AP がポーリング フレーム (BAR) に応答するのを待ちます. AP は BAR フレームを順番に送信します.対応する STA の BA フレームを取得する AP は次の MU データ フレームを送信し、メッセージを送信する具体的なプロセスを図 11 に示します。
▲図11: APはMU-MIMOユーザーにメッセージの送信
アップリンク MU-MIMO
アップリンク MU-MIMO 技術はWi-Fi 6 で新規採用された機能です。主な実装方法は、AP がトリガーフレームを送信するより複数の STA のアップリンク同期送信を開始することです。 アップリンク MU-MIMO の原理は SU-MIMO と似ていますが、違いはSU-MIMO は同じ STA によって単一または複数の空間ストリームを送信し、アップリンク MU-MIMO の複数の空間ストリームは異なる STA から送信されることです。
APがトリガフレームを送信して複数のSTAから同期アップリンク送信を開始すると、APは受信ビームにチャネル行列を適用して各アップリンクビームに含まれる情報を分離し、すべてのSTAからビーム形成フィードバックを受信します。APアップリンクMU-MIMOイメージ図を図12に示します。
図12:APアップリンクMU-MIMOのイメージ図
アップリンクMU-MIMOの具体的なインタラクションプロセスを図13に示すが、APはまず、STAの送信時間(When)、ペイロード期間、PE(機器能力情報を含むフレーム)、GIタイプなどを宣言したトリガフレームHE_Triggerを送信し、STAはこれらのパラメータを受信すると必要に応じてUL MU PPDU(Up Load Multi-User PHY Protocol Data Unit)を送信すると同時にAP側のユーザ情報の受信・復調を実施する。
図13:アップリンクMU-MIMOの相互作用プロセス
トリガフレームHE_Triggerに基づくアップリンク送信メカニズムは、受信AP側での同期の問題を軽減する目的で、送信ユーザーのSTA側に送信時間、周波数、サンプリングクロック、電力に関する要求があります。 周波数とサンプリングクロックの同期によりICI(Inter Channel Interference)干渉を防ぎ、パワー・プリコンペンセーションにより受信側でのユーザー信号の相互干渉を低減することができます。
高密度アクセス - OFDMA (直交周波数分割多元接続)
Wi-Fi は、802.11a (1999 年にリリースされた第 3 世代の Wi-Fi プロトコル) 以来、コア チャネル変調方式として OFDM 変調を使用してきました. Wi-Fi 6 は、OFDM に基づいて複数のアクセス (つまり、マルチユーザー)技術を採用されます。それにより、OFDMA (直交周波数分割多元接続、直交周波数分割多元接続) に進化しました。
よく知られた OFDM 変調の原理は、チャネルをサブキャリアに分割することですが、1 つチャネル内のサブキャリアを同時に使用する必要があります。 OFDMA 変調は、既存の 802.11 チャネル (20、40、80、および 160MHz 幅) を、固定のサブキャリアを持つ小さなサブチャネルに分割し、さらに特定のサブキャリア セットを個々の STA に割り当てることによって、複数のユーザーに同時にサービスを提供します。図 14 は、Wi-Fi 6 システムがチャネル周波数分割多重化に異なるサイズのリソース ユニットを使用する方法を示しています。
図14:OFDMとOFDMAの動作モードの比較
OFDMA は成熟した4G セルラー技術です. Wi-Fi 6 規格も LTE の適切な用語を模倣し、最小のサブチャネルを「RU」(リソース ユニット) と呼び、各 RU には少なくとも 26 のサブキャリアが含まれています (2MHz帯域幅に相当する)。 Wi-Fi 6 は、26/52/106/242/484/996/2*996 などの仕様を含む、さまざまなサイズの RU に含まれるサブキャリアの数を指定します。
20MHz の帯域幅例としてOFDM 方式では、各フレームは 52 のデータ サブキャリアで構成されます. このサブキャリアのグループは、1 台端末のみサービスを提供できます. 端末によって送信されるデータパケットが小さい場合 (チャットなど)サブキャリア数が 52 以下の場合、空いているサブキャリアを他の端末に割り当てることはできません。
OFDMA方式では、1フレームは242本のデータサブキャリアで構成され、フレーム内で2次グループ化されます。 26本のサブキャリアをリソースユニット(RU)と定義し、RUごとに1端末に対応できるため、1フレームを9分割して9人ユーザーに同時に対応可能です。
図15:周波数幅20MHzにおけるRU分布図
OFDMA技術のメリットをより理解しやくために、荷物を運ぶトラックの例を挙げられます。
OFDM方式は、荷物の大きさに関係なく、オーダーごとにトラックを手配します。たとえ小さな荷物でも1台のトラックで搬送するため、効率がわるくてリソースの無駄遣いになります。OFDMA方式は複数の注文をまとめて、トラックに荷物満タンにするようにしますので、輸送効率が格段に高くなります。
図16:OFDMとOFDMAのトラフィック伝送比較イメージ図
OFDMAの仕組みを理解することで、OFDMAは複数のユーザーが同時にデータを送信することができ、ヌルポートの効率が上がることがわかります。 次に、アップリンクOFDMAとダウンリンクOFDMAそれぞれの動作原理を紹介いたします。
ダウンリンクOFDMA
図 17:ダウンリンク OFDMA のデータ送信処理
帯域幅が20MHz以下の端末が存在するため(図15に示すように、Wi-Fi 6プロトコルで規定されている最小帯域幅20MHzは9台の端末で使用可能であり、各RUには26個のサブキャリアが含まれるため、20MHz以下の帯域幅が存在する可能性があります)最初にデータを送信する中に、もし20MHz 以下の場合、各端末は 20MHz の帯域幅でプリアンブルフレームを送信します。
ダウンリンク OFDMA は周波数ドメインで元の帯域幅を小さな帯域幅にさらに分解するため、STA はデータを受信した後に周波数ドメインで個別のデコード操作を実行できるため、ダウンリンク MU-MIMO のようなフィードバックは必要ありません。 NDP や NDP-A などのフレームの相互作用も必要がありません。
アップリンク OFDMA
アップリンク OFDMAは、アップリンク MU-MIMOと同様であり、AP によって最初に開始される必要があるため、AP はアップリンク OFDMA を開始する前にトリガー フレームを送信する必要があります。
図 18:アップリンク OFDMA のデータ送信処理
トリガーフレーム(Trigger frame)は、空間ストリーム数、OFDMA リソース割り当 (ユーザーの周波数と RU サイズを含む)、PPDU (PHY Protocol Data Unit)の持続時間を示す役割です。またユーザーの受信電力情報送信電力制御に関する情報も含まれています。
アップリンク MU-MIMO ユーザトリガーフレームベースのアップリンク送信メカニズムには、受信 AP の同期問題を軽減するために、送信時間、周波数、サンプリング クロック、および送信ユーザー STA の電力に対して需要があります。周波数とサンプリング クロックの同期により、ICI (Inter Channel Interference) 干渉を防ぐことができ、電力の事前補償により、受信側でのユーザー信号の相互干渉を減らすことができます。
高密度アクセス技術のまとめ
MU-MIMO と OFDMA についての説明を読んでいただきいてからOFDMA は MU-MIMO と似ていると思いませんか?どちらも複数ユーザーのアップリンクとダウンリンクを解決し、無線アクセス密度を向上させますが、実際には、両方の違いは非常に大きいです。どちらも並列転送方式ですが、反復的でも競合的でもなく、補完的です。それぞれの技術原理は異なり、適用されるシナリオも異なります.具体的な用途は、サービス種類に応じて決定する必要があります.
図19:MU-MIMOとOFDMAの応用シナリオの比較
MU-MIMO: 物理空間でのマルチチャネル同時接続を実現し、サイズが大きなデータパケット (ビデオ、ダウンロード、その他のアプリケーションなど) の並列伝送に適しており、マルチ空間ストリームの使用率とシステム容量を改善し、ユーザー一人当たりの有効な帯域幅を改善され、遅延も減らすことができます。しかし、実行状態は十分に安定しておらず、端末の影響を受けやすいです。 OFDMA: 周波数ドメイン空間でマルチチャネル同時実行を実現し、小さなデータパケット (Web ブラウジング、インスタント メッセージング、その他のアプリケーションなど) の並列伝送に適しており、単一の空間ストリームのチャネル使用率と伝送効率を改善し、アプリケーションの遅延とユーザーのキューイングを低減します。動作状態は安定しており、端末の影響を受けにくいです。
したがって、MU-MIMO と OFDMAはお互いに競合せず、重ねて使用されることがよくあります。展開の際に、サービスに応じてリソースを割り当てます (Web ブラウジング、動画視聴、ダウンロード、即時メッセージングおよびその他のサービス利用など) MU-MIMO および OFDMA の合理的な設計により、高密度環境でアクセス際に引き起こされるアップリンクおよびダウンリンクでの端末のランダムアクセスの競合を効果的に削減できユーザーエクスペリエンスを効果的に向上させます。実際の使用では、ユーザーは並列伝送の動作メカニズムを気にする必要はありません.何台の端末でもサクサクなネットワークを楽しむことができます.
Wi-Fi6は快適、サクサク通信できる理由3: 干渉防止 - SR (空間多重化)
Wi-Fi が普及された時代では、ワイヤレス間の干渉もよくあります。ワイヤレス信号による干渉では以下2 種類があります。
隣接周波数による干渉: 隣接する周波数帯域の電波の重畳により干渉が発生し、データの破損につながる可能性があります;
同一チャネルよる干渉: データに損傷はありませんが、競合のオーバーヘッドが増加します。
これらの干渉原因としては環境内でたくさん独立の AP があるため、無線信号がクロスカバレッジが多くなり、干渉が発生します。しかし、技術原理の観点から見ると、干渉原因は、従来の 802.11 技術がCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance,CSMA/CA) を使用してアクセス制御を実現していることにあります。
CSMA/CAは、すべてのワイヤレスデバイスに均一に作用する単一のクリアチャネル アセスメント (CCA、Clear Channel Assessment) ルールを使用します. 同じエリア内のすべてのワイヤレス デバイスは、エネルギー検出とキャリア センスを使用して、チャネルがアイドル状態かどうかを判断します。Wi-Fi デバイス (クライアントまたは AP) は、Wi-Fi フレームの信号強度が事前に設定されたしきい値よりも高いことを認識すると、送信が完了するのを待ってから、自身のフレームを送信します。このポーリングと待機メカニズムにより、過剰な衝突と頻繁な再試行が回避されますが、Wi-Fi デバイス (クライアントまたは AP) の待機時間が大幅に増加し、ワイヤレス システム全体の伝送効率とパフォーマンスが低下になります。
実際の利用では、AP でのパケット受信ロジックに基づいてさらにパフォマンスの制限が拡大されます。 AP のパケット受信ロジックでは、最小感度を超えるパケットのみを正しく復調できます.パケットが正しく復調された場合、電力がCCA-SD (Clear Channel Assessment Signal Detection)を超えるパケットがバックオフを発生しますが、自身に送信されたパケットが失われないようにするために、Wi-Fi 4/5 プロトコルを使用する場合、CCA-SD の電力は一般的に非常に低く設定されます。多くのAPは CCA-SD 電力を最小感度に設定するため同一チャネル干渉バックオフが発生しやすくなり、ワイヤレス システム全体のパフォーマンスがさらに低下されます. AP を追加しても、ネットワークの容量を拡張することはできません。 Wi-Fi 4/5 のパケット送信原理を図 20 に示します。
図 20:Wi-Fi 4/5 のパケット配信原理
干渉防止―動的 CCA およびSpatial Reuse
高密度環境でCSMA/CA 技術が干渉発生しやすい問題を解決するために、Wi-Fi 6 は空間再利用を促進するSpatial Reuse Technique技術を採用され、この技術はBSS (Basic Service Set) とColor BitによりどのBBSのデータフレームを識別できるため「BSSカラーリング」(BSS coloring)技術とも呼ばれています。
「BSS カラーリング」技術により、無線設備(クライアントまたは AP) は、新しく追加されたカラービットで無線パケットが BSS または OBSS (0verlapping Basic Service Sets) から送信されたかどうかを識別できるため、BSS 間のCCA-SD (Clear Channel Assessment Signal Detection) の閾値を上げ、BSS 内部の CCA-SD 閾値を動的に下げて、OBSS のデータフレームを効率的に無視することができます。つまり、単一のCCA電圧検出値を使用してチャネルが「アイドル」であるかどうかを判断するWi-Fi 4/5とは異なり、「BSSカラーリング」技術はBSS間のCCA-SD とOBSS CCA-SD 2つの値に基づいて判断することでOBSS からのパケットの不要なエアインターフェイスの競合を抑えることができます。
図21:BSSカラーリングによるチャネルアイドル状態の判断
干渉防止技術の概要
「BSS カラーリング」技術により、周囲の他のデバイスが無線媒体を同時使用できるかどうか判断できるようにワイヤレス通信の開始の時にマークが付けられています。隣接ネットワークから検出された信号が従来の信号しきい値を超えても、新しい送信電力を適切に下げれば、その無線媒体はアイドル状態と見なされ、新しい送信を開始することによりワイヤレスシステムの干渉防止能力が向上されます。
ただし、APは標準のカラービット (Color Bit) と動的 CCA インターフェースだけでWi-Fi 6 の干渉防止同時ゲインを取得できないため、必ず周囲のワイヤレス環境のリアルタイムで認識と動的なSRアルゴリズムに合わせて,自身以外のBSSの干渉パケットを受信した際ににパケットを送信できるかどうかをより適切に判断できます.
Ruijie Networks はWi-Fi 6 のチップがリリースされる前に、Wi-Fi 6 の空間多重化技術に対して具体的な分析を行い、またその技術を既存の Wi-Fi 4/5 プロトコルに使用し、高密度ネットワーク下で高い並行性を実現するために、同一チャンネルのAPの強度と各AP上のユーザーのRSSIを収集してCCAの閾値をダイナミックに調整するPre-axアルゴリズムを提案することでワイヤレスネットワークの通信品質を効果的に改善されています。 Wi-Fi 6 のAP では、プロトコルによって提供される標準に従ってアルゴリズムがさらに最適化され、より優れた干渉防止効果とより高い同時多重化パフォーマンスが実現されます。
その他の技術改善
省電力管理技術 - TWT (Target Wake Time)
TWT (ターゲット ウェイクアップ タイム) は、802.11ah 標準を参考してWi-Fi 6 で新たに追加されたもう1つ重要なリソーススケジューリング機能です。 「ターゲット ウェイク タイム (TWT)」は、その名前が示すように、デバイスがいつ、どのくらいの頻度でウェイクアップしてデータを送信または受信するかをネゴシエートできる以外にデバイスがビーコン送信サイクルの別の時間にウェイクアップもできます。さらに、無線APは、クライアントを異なる TWT サイクルにグループ化できるため、ウェイクアップ後に同時に無線媒体を競合するデバイスの数を減らすことができます。また、TWT はデバイスのスリープ時間を増やし、 TWT までにスリープ状態になるため、バッテリーの寿命が延びます。
Wi-Fi 6 AP は、個別にスケジューリングアジェンダを設定し、TWT 値を STA に渡すこともできます。このように、双方で個別の TWT プロトコルは必要ありません。この操作は「ブロードキャスト TWT モード」と呼ばれます。ブロードキャスト TWT モード" 操作図を図 22 に示します。
図 22:TWTのウェイクアップタイムのイメージ図
図 22 用語の説明:
• TBTT (Target Beacon Transmission Time): ビーコンのスケジュールされた送信時間. 実際には、これは時間指定されたビーコンの送信/受信アクションの期間であり、期間の時間はBeacon Intervalによって決定されます。
• Listen Interval(リッスン間隔): リッスン間隔は、ワークステーションが 2 回のウェイクアップの間に通過した TBTT の数、つまりスキップされたビーコンフレームの数を表します。
「ブロードキャスト TWT モード」は、OFDMA技術と合わせて使用するで複数のデバイスを同時にウェイクアップさせ、ビデオ、音声、IoTなどの異なるサービスを送信する複数のデバイスの同時接続を実現し、サービスに応じてトラフィックの比率と優先度を調整することでユーザーのエクスペリエンスを向上できます。
2.4G Hz /5GHz 帯デュアルバンドの設計
Wi-Fi 5 は 5GHz 帯のみを対応し、技術の面で2.4G Hz 帯に対応する Wi-Fi 4 を取って代わることができないためWi-Fi 4 と Wi-Fi 5 標準は平行の標準とみなすことができます.現在、 Wi-Fi 5 の無線AP は、実際には Wi-Fi 4/5 (802.11n/802.11ac) デュアル規格の製品です。
最新の Wi-Fi 6 標準は2.4G Hz と5GHz 帯で動作するワイヤレスプロトコルです。したがって、Wi-Fi 6 は Wi-Fi 4 の次世代技術であり、下位互換性を完全に実現し、根本的に技術的のイテレーションを実現できます。
Ruijie Networks はWi-Fi 6があらゆる利用シナリオにおける研究
弊社は、屋内のマルチパスフェージング、屋外の長距離伝送、およびマルチユーザーの高密度アクセス (マルチユーザーの小さなパケット、マルチユーザーの大きなパケット、マルチユーザーのアップロードなど) などの環境における実践を展開しております。将来的には、さまざまな業界のシナリオに向けて、より革新的な包括的なソリューションを引き続き提案し、ユーザーが期待以上のエクスペリエンスを提供できるように努力しております。