従来のデータセンターは10Gネットワークアーキテクチャーが主流でしたが、AI、ディープラーニング、ビッグデータコンピューティングなどの大規模なサービス展開に対応するため、次世代データセンターアーキテクチャーは25G/100Gネットワークアーキテクチャーへと進化しています。
25G/100Gデータセンターの構築には大量の100G光モジュールが必要となり、ネットワーク構築コストが比較的高くなります。100G光モジュールの規格とは何か、どのように選べばよいのでしょうか。ここでは、データセンターの100G光モジュールの規格とパッケージ形式について簡単にご紹介致します。
100G光モジュールの標準化組織
光モジュールの規格を共有する前に、まず光モジュールの標準化組織を説明します。光モジュールの定義は、主に2つの主要な組織、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)とMSA(Multi Source Agreement) に基づいております。
802.3はIEEE組織のワーキンググループであり、802.3グループによって10G、40G、100G、400Gの光モジュール規格が多数提案されています。
MSAはマルチサプライヤー仕様であり、IEEEと比較して非正式組織形態であり、異なる光モジュール規格に対して異なるMSA協定が形成され、業界における企業同盟と理解すれば良いです。光モジュールの構造パッケージ (寸法、電気コネクタ、ピン割り当てなど)を定義することに加えて、MSAは光モジュール標準を形成する為の電気および光インターフェースも定義します。
以前、光モジュール産業チェーンは非常に混沌としており、各メーカーは独自の構造パッケージを持ち、開発された光モジュールは混乱していました。この問題を解決する為に、MSAマルチソースプロトコルが誕生しました。すべてのメーカーは、携帯電話の充電ポートの標準化のように、MSAが提案する標準の統合光モジュール構造パッケージと関連インターフェイスに従っています。100Gの場合、MSAによって定義された標準には、100G PSM4 MSA、100G CWDM4 MSA、および 100G Lambda MSA が含まれます。
100G光モジュール規格
異なる距離の100G接続場面に対応するため、IEEEとMSAでは10種類以上の100G規格が定義されていますが、主流となっているのは以下の6種類です。
標準 | 公表組織 | コネクタ | 光ファイバ | 転送距離 |
100GBASE-SR10 | IEEE 802.3 | 24コアMPO | マルチモード850nm | OM3 100M OM4 150M |
100GBASE-SR4 | IEEE 802.3 | 12コアMPO | マルチモード850nm | OM4 100M |
100GBASE-LR4 | IEEE 802.3 | デュプレックスlc | シングルモード1295-1309nm | 10KM |
100GBASE-ER4 | IEEE 802.3 | デュプレックスlc | シングルモード1295-1309nm | 40KM |
100G PSM4 | MSA | 12コアMPO | シングルモード1310nm | 500M |
100G CWDM4 | MSA | デュプレックスlc | シングルモード1271-1331nm | 2KM |
▲100G光モジュールの主流規格
100GBASE命名規則の規格はすべて802.3グループで提案されます。
▲命名規則
図に示すように:
100GBASE-LR4の命名規則は、LRが10Kmのロングリーチ、4が4チャンネルの4×25Gの組み合わせで、10Kmを伝送できる100Gの光モジュールです。
-Rの命名規則は次のとおりです。
▲-R名詞の説明
IEEEが提案する100GBASEシリーズ規格に加えて、なぜMSAはPSM4およびCWDM4規格も提案するでしょうか。
100GBASE-SR4および100GBASE-LR4は、IEEEによって定義された最も一般的に使用されている100Gインターフェイス仕様です。しかし、大規模なデータセンターの内部相互接続場合では、100GBASE-SR4の距離は短すぎ、100GBASE-LR4のコストは高すぎます。そこでMSAは中距離相互接続のソリューションを市場にもたらしました。
もちろん、100GBASE-LR4の機能はCWDM4を完全にカバーしますが、2Km伝送の場合では、CWDM4ソリューションの方がコストが低く、競争力があります。
この図は、100GBASE-LR4と100GCWDM4の原理図です。
▲100GBASE-LR4の原理図
▲100G CWDM4の原理図
LR4とCWDM4は原理的に類似しており、どちらも光デバイスMUXとDEMUXを使用して、4つのパラレル25Gチャネルを100G光ファイバーリンクに多重化します。しかし、2つの間にはいくつかの違いがあります。
LR4で使用される光MUX/DEMUXデバイスはより高い
CWDM4は20nmのCWDM間隔を定義します。これは、レーザーの波長ドリフト特性が約 0.08nm/°C であり、0~70°Cの動作範囲での波長変化は約5.6nmであるため、チャネル自体にもいくつかの分離バンドを残しておく必要があります。
チャンネル 1: 1264.5~1277.5nm
チャンネル 2: 1284.5~1297.5nm
チャンネル 3: 1304.5~1317.5nm
チャンネル 4: 1324.5~1337.5nm
そして、LR4 は 4.5nm LAN-WDM 間隔を定義します。
チャンネル 1: 1294.53~1296.59nm
チャンネル 2: 1299.02~1301.09nm
チャンネル 3: 1303.54~1305.63nm
チャンネル 4: 1308.09~1310.19nm
チャネル間隔が大きいほど、光MUX/DEMUXデバイスの要件が低くなり、コストを節約できます。
LR4で使用されるレーザーはより高くて、消費電力も高い
CWDM4はDML(Direct Modulated Laser、直接変調レーザー)を使用し、LR4はEML(Electro-absorption Modulated Laser、電気吸収変調レーザー)を使用します。
DMLは単一のデバイスに対して、EMLは2つのデバイスです。1つはDML、もう1つは EAM変調器です。DMLの原理は、レーザーの注入電流を変調することで信号変調を実現することです。注入電流の大きさは、レーザーの活性領域の屈折率を変化させ、波長シフト(チャープ)を引き起こし、分散を引き起こすため、高速信号の変調が難しく、伝送も難しく、距離も十分ではありません。10KMはDMLにしては少し無力なのでEMLしか使えません。
注: チャープとは、時間の経過とともに周波数が変化 (増加または減少) する信号のことで、鳥のさえずりに似た信号です。
LR4には追加のTEC(Thermo Electric Cooler)が必要
LR4の隣接チャネル間の間隔は4.5nmしかないため、温度を制御するためにレーザーをTECに配置する必要があります。TEC Driverチップを回路上に配置し、レーザーを TEC材料に統合する必要がある為、LR4のコストはCWDM4に比べて高くなります。
上記の3点から、100GBASE-LR4標準光モジュールのコストは高いため、MSAが提案する100G CWDM4標準は、2Km以内の100GBASE-LR4の高コストによるギャップを十分に補っています。
PSM4も中距離伝送方式ですが、CWDM4と比べてPSM4のメリットとデメリットはどうでしょうか。
100G PSM4仕様では、8本のシングルモード光ファイバー(4本の送信と4本の受信)を備えたポイントツーポイントの100Gbpsリンクが定義されており、各チャネルは25Gbps のレートで送信します。各信号方向は、同じ波長の4つの独立したチャネルを使用します。したがって、2つのトランシーバーは通常、8光ファイバーMTP/MPOシングルモード パッチコードを介して通信します。PSM4の最大伝送距離は500メートルです。
▲PSM4の原理図
簡単にまとめると、下図に示すように、CWDM4光モジュールのコストは、波長分割マルチプレクサーの使用により、PSM4光モジュールよりも高くなります。しかし、CWDM4 トランシーバーは、両方向に2つのシングルモードファイバーしか必要としません。これは、PSM4の8つのシングルモードファイバーよりもはるかに少ないです。実際の運用中では、接続距離に応じてPSM4を使用するかCWDM4を使用するかを決定する必要があります。
CWDM4光モジュール | PSM4光モジュール | |
波長分割マルチプレクサー | 必要 | 非必要 |
インターフェース | デュプレックスlc | 8コアMPO/MTP |
距離 | <2KM | <500M |
▲CWDM4 vs PSM4
100G中長距離光モジュールの規格について紹介したので、100G短距離光モジュールを見てみましょう。
100Gの短距離光モジュールには、主に100GBASE-SR10と100GBASE-SR4の2つの規格があります。以前、市場に登場した100Gの需要に応えるために、100GBASE-SR10規格が最初に提案され、100Gの短距離相互接続に適用されました。
100GBASE-SR10規格は、10Gbpsの並列チャネルを10本使用して100Gbpsのポイントツーポイント伝送を実現し、電気信号のレートは10G、光信号のレートも10Gで、NRZ変調と64B/66Bエンコーディングを使用します。IEEE 802.3が2010年に100GBASE-SR10標準を提案したため、スイッチASICチップ (Application Specific Integrated Circuit) の電気インターフェイスは、最大10G、つまりCAUI-10(10チャネルx10Gbps)しかサポートできませんでした。
▲100GBASE-SR10の原理図
スイッチASICチップの電気インターフェイスレートが10Gpbsから25Gbpsに向上したため、電気インターフェイス規格はCAUI-10(10チャネルx10Gbps)からCAUI-4(4チャネルx25Gbps) にアップグレードされ、チャネルはSR10のパラレル10チャンネルからパラレル4チャンネルに減ります。そのため、光モジュールの部品数、コスト、消費電力が削減され、モジュールのサイズも縮小されます。
光モジュールの小型化により、スイッチが1Uのスペースあたりに提供できる100Gインターフェース密度が高くなります。上記のメリットに基づいて、現在、光モジュール規格100GBASE-SR4は、現在の主流の100G短距離として100GBASE-SR10を置き換えました。
▲100GBASE-SR4の原理図
100G光モジュールパッケージ
完全な光モジュールソリューションである為には、光モジュールの光インターフェースと電気インターフェースの規格だけでは十分ではなく、支持構造パッケージも必要です。100G光モジュールのパッケージ形式には、主に CFP、CFP2、CFP4、QSFP28が含まれます。
CFPが最初に提案されたことは、短距離伝送用の100GBASE-SR10規格と、長距離伝送用の100GBASE-LR4規格です。第一世代CFPの長距離伝送方式は、電気インターフェースの能力がCAUI-10のみであるため、10x10Gbpsから4x25Gbpsの電気信号の変換を実現するには、内蔵ギアボックス(下図の10:4シリアライザ)が必要です。その後、電気信号が CAUI-4 にアップグレードされたため、第 2 世代 CFP (CFP2/CFP4) の長距離伝送方式は、内蔵のギアボックスを必要としませんでした。
▲第1世代CFP光モジュール長距離ソリューション
しかし、CFPのサイズが大きすぎるため、光モジュールの高集積化に伴い、その後の開発方向はサイズの小型化と低消費電力化であり、CFPはCFP2、CFP4、そして後に登場したQSFP28へと進化していました。CFP4と比較して、QSFP28はサイズが小さく、消費電力が低いため、スイッチのポート密度を高めることができます (一般的な形式では、各ボードで36個の100Gインターフェイスを展開できます)。現在、QSFP28はデータセンターの100G光モジュールの主流のパッケージフォーマットです。
▲CFP/CFP2/CFP4/QSFP28光モジュールサイズ比較
最後に、25G/100Gデータセンターでの相互接続光モジュールの選択方法について要約すると、次の標準を参照することをお勧めします。
100メートル以内の100G短距離相互接続(TOR-LEAF)の場合は、100GBASE-SR4、QSFP28 光モジュールを使用します。
100メートルから500メートルまでの100G中距離相互接続(LEAF-SPINE)の場合は、100G PSM4、QSFP28光モジュールを使用します。
500メートルから2Kmまでの100G中距離および長距離相互接続 (LEAF-SPINE、SPINE-CORE) の場合は、100G CWDM4、QSFP28光モジュールを使用します。
2Kmを超える長距離相互接続 (CORE-MAN) の場合は、100GBASE-LR4、QSFP28光モジュールを使用します。